
高血圧(こうけつあつ、Hypertension)とは、血圧が正常範囲を超えて高く維持されている状態である。高血圧自体の自覚症状は何もないことが多いが、虚血性心疾患、脳卒中、腎不全などの発症原因となるので臨床的には重大な状態である。
生活習慣病のひとつとされる。高血圧というのは中年以降になってその状態になってしまってから対処する、といった発想で対応してよいものではなく、若いうちから生活習慣を改め、予防することのほうがはるかに大切で、それこそがもっとも有効な対策となるものである。一般的に、若いうちから塩分を控えた食生活にすることや、たっぷり野菜をとることや、喫煙をしないことや、適度に運動を実行することが鍵となる。本人の努力も必要なことは言うまでもないが、親や家族や地域の連携的な対策も鍵となる。肥満、高脂血症、糖尿病との合併は「インスリン抵抗性症候群」などは現在メタボリックシンドロームと呼ばれる。
収縮期血圧が140mmHg以上または拡張期血圧が90以上に保たれた状態が高血圧であるとされている。しかし、近年の研究では血圧は高ければ高いだけ合併症のリスクが高まるため、収縮期血圧で120未満が生体の血管にとって負担が少ない血圧レベルとされている。
ここで注意すべきは、血圧が高い状態が持続することが問題となるのであり、運動時や緊張した場合などの一過性の高血圧についての言及ではないということである。高血圧の診断基準は数回の測定の平均値を対象としている。運動や精神的な興奮で一過性に血圧が上がるのは生理的な反応であり、これは高血圧の概念とはまた違うものである。
血圧は1日の中でも変動している。そのため、計測する時間帯には正常値の基準を満たしているものの、その他のほとんどの時間帯には高血圧となっている場合がある。これを仮面高血圧と呼ぶ。また降圧剤が処方されている場合でも、その効果が切れている時間帯では安全域を外れている場合もある。この点にも留意する必要がある。逆に、普段は正常血圧なのに診察室で医師が測定すると血圧が上昇して、高血圧と診断されてしまう場合もあり、“白衣高血圧”とよばれる。
糖尿病患者では起立性低血圧の症例が有るため、座位だけでなく臥位・立位でも測定する。
上腕の血圧測定結果で左右の血圧差が生じることがある。血圧差は、上腕動脈或いは鎖骨下動脈の病変に起因すると考えられ、差が10mmHg以上の患者は心血管疾患による死亡リスクが有意に高い。また、家庭で測定を行う場合は高い側の腕で測定を行うことが推奨されている。
日本高血圧学会によれば「家庭血圧測定条件設定の指針」で、
測定部位:上腕が推奨。手首、指血圧計の使用は避ける。
朝の場合は、起床後1時間以内、排尿後、服薬前、朝食前の安静時、座位1 - 2分後に測定。
夜の場合は就床前の安静時、座位1 - 2分後に測定。
朝夜の、任意の期間の平均値と標準偏差によって評価。
家庭血圧は135/85 mmHg以上は治療対象、125/75 mmHg未満を正常血圧。
などとしている。

本態性高血圧症
本態性高血圧(原発性高血圧) 原因は単一ではなく、両親から受け継いだ遺伝素因に加えて、生後の成長過程、加齢プロセスにおける食事、ストレスなどの様々な生活習慣がモザイクのように複雑に絡みあって生じる病態(モザイク説)。高血圧患者の9割以上を占める。
食塩感受性高血圧は、遺伝的素因と食塩摂取過剰を兼ね持つもので、本態性高血圧の一部を占める。
二次性高血圧
二次性高血圧 明らかな原因疾患があって生じる高血圧をいい、以下のような疾患が原因となる。頻度は少ないが手術などによって完治する確率が高いのでその診断は重要である。
大動脈縮窄症 先天性疾患
腎血管性高血圧 腎動脈の狭窄があり、血流量の減った腎でレニンの分泌が亢進することで起きる。
腎実質性高血圧 腎糸球体の障害により起こる。
原発性アルドステロン症 (primary aldosteronism; PA) 副腎皮質の腫瘍からアルドステロンが過剰に分泌されるため起こる。
偽性アルドステロン症 グリチルリチン酸により、11-βHSD2活性が抑制され、コルチゾール代謝の阻害→コルチゾールの残存→ミネラルコルチコイド受容体刺激となる。
Apparent Mineralocorticoid Excess症候群(AME症候群) 11-βHSDの異常からおこる常染色体劣性遺伝疾患。
Liddle症候群 低カリウム血症、代謝性アルカローシスを来す常染色体優性の遺伝性高血圧症。Epethelial Sodium Channel; ENaCの異常から生じる。
クッシング症候群 副腎皮質の腫瘍からコルチゾールが過剰に分泌されるため起こる。
褐色細胞腫 副腎髄質や神経節の腫瘍からアドレナリンまたはノルアドレナリンが過剰に分泌されるため起こる
大動脈炎症候群 膠原病の一つ。
甲状腺機能異常 甲状腺機能亢進症や甲状腺機能低下症
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症より改名)。
高カルシウム血症
この他、脳血管障害の急性期に著明な高血圧を来すことが知られている。脳出血では応急的な降圧が必要だが、脳梗塞では寧ろ脳血流を保てなくなる恐れがある為、降圧は行われない。